昭和、平成時代の河川管理現場で体験したこと

見聞きしたこと、考えたこと、出来なかったことを伝えたい

日本の堤防のほとんどは、構造体 としては作られていない

被災のたびごとに拡張してきた歴史的建造物
 家屋や橋梁などの人工工作物のほとんどは、その構造体に対して安全を保障する設計基準があり、これに対応できる構造物が設置されています。

 堤防も人工構造物なので、堤防がどの程度の外力(洪水の規模など)なら一定の安全を保障する設計目標に従い堤防を作っていると一般には思われています。 しかし有史以来、補強やかさ上げを断続的行って現在の堤防が形作られた我が国の一般的な堤防は、そのほとんどが、設計目標を設定して建設した 構造体 として作られていないのです。 構造体として全国の堤防を再構築する力がいままでの日本にはなったのです。

 プロである河川管理を仕事にしている技術者でも、この事実をつい忘れがちです。

 

ダムは構造体として建設されている

 下の図は、河川砂防技術基準(案)の第2章ダムの設計にある図です。 「均一 型フィルダム」は、土質や粒子を選択して設計するものです。ダムの底にはカー テングラウトがなされて、 河表からの水圧で浸透水が抜けない構造担っています。 また、浸透水の状態を観測する機器も備えています。
 「ゾーン型フィルダム」や「表面遮水壁型フィルダム」などの種類はありますが、いずれも構造体として設計しているダムで、材料や施工方法を含めて、構造 体としての情報は。明らかになっています。

 

では、堤防はどのように作られているのか

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 このブログの「堤防という構造物を知ろ1)」で、堤防は太古の昔から作られ始めた構造物であることは紹介しました。

 

ほとんどの堤防は、築造履歴が分かっていません。 施工年次は近年のものは分かりますが、それでもその堤防のどんな断面を補強したのかなどの断面構造を 調べるのは、保存書類を調べることになります。
 右端図のように、必要な情報が分かっているのは、近年の仕事だけです。 これにしても、3次元データで、連続した堤防の状況はまだほとんどの堤防は 確認できません。 いま、国土交通省では、ようやく堤防データの標準化、構造化による3次元データ化を進めています。 この3次元の堤防データが格納でき るデータバースが整備され、データが格納され、運用されるようになれば、誰もが、自分の生命、財産を守っている堤防の情況を確認できるようになります。  しかしこれは容易にできるなことではありません。

 一目で、ここの堤防の築造年次、その横断面図や土質状態が分かるようにはなっていないのには、理由があります。
 我が国の堤防は、日本書紀、仁徳11年の記事に、「天皇は、洪水や高潮を防ぐことを目的として、淀川に茨田堤を築いた」とあるようにその 歴史は古く、私たちの祖先は努力を欠かさず、少しづつ盛り土をかさ上げした形が、今見られる形状です。

 

 

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