昭和、平成時代の河川管理現場で体験したこと

見聞きしたこと、考えたこと、出来なかったことを伝えたい

住民に情報を出すことが河川を管理する者の責務

 住民自身が日ごろ 川 にかかわられなくなった結果?

 現在では、今住んでいる場所は水害から堤防で守られていると、多くの人は安心して暮らしています。 その安心の根拠には、専門の役所、河川管理者が日常的に対応しているはず、というごく自然な信頼があると思います。 昔は「治水」は為政者の基本的な仕事でしたが、現代では誰もが多様な課題に対応していて、社会の関心が常時治水にないことには無理がありません。

 治水の知識は、今のように情報のない江戸時代以前には、住民こそが治水のプロフェッショナルでした。

 住民が治水に希薄になったのは産業構造の変化です。土着してそこで暮らす住民が少なくなり、水防団などの自治組織が機能しなくなったのです。 また、明治時代以降、大きな治水工事が進むにつれて、安心感が広がり、その結果治水の住民の危機感が希薄になったということにも原因があります。

 しかし、どんなに社会の変化があろうと、住民が治水の主役であることには変わりがありません。国や地方自治体が根本的な防災施設を作り終えていると考えるのは幻想です。 全国のどの河川でも、お役所は投入できる財源を限度として、今できる最小限度の対策をしている(あるいはその途上)にすぎません。山崩れや高潮、洪水など、急峻な山地と沖積平野に住居を置くわが日本の永遠の宿命です。

  そんな当たり前のことは、高度経済成長以前の人なら誰でも知っていました。 

 川という自然が、恩恵と厄災両方を併せ持つことを、毎日の生活の中で日々実感していた時代は常識でしたが、いまは専門の河川管理者という組織が運営されるようになったので、このことを忘れがちになることは、無理がないと思うのです。

 それだけに、住民一人一人が、水害という自然現象とその防御能力の程度を日ごろから学習することが必要ですが、なかなか出来ないこととは思います。

 いざの時、お役所は頼りにはなりません。 水害は火災のように場所が特定できなく、それこそ一帯で同時に起きます。 お手上げです。 

 お各所は日ごろから住民に情報を出す、住民はそれを知って自衛する、こんな関係が大事と思うのです。

 

今では浸水地形などの情報は手に入る

 国や県、市町村では、「洪水浸水予想図」を作成、配布しています。役場や、国土交通省の河川事務所に問い合わせると、手に入ります。 

 また、自分の住んでいる土地が、昔はどんな土地だったのかがわかる地図も公表されていてインターネットで手に入ります。 国土地理院発行の「治水地形分類図」です。 これを見ると今は埋め立てられている昔の川跡や、しっかりした地盤かどうかなどが確認できます。 

http://www.gsi.go.jp/bousaichiri/fc_list_b.htmll